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第6回 マグネシウム
今回はマグネシウムを取り上げましょう。かつてはレーシングカーに多く使われた花形的存在でしたが、最近ではめっきり登場のチャンスを奪われてしまった素材です。とはいっても最近では、21世紀の主役のひとつになりそうなあるモノに採り入れられ、また脚光を浴びています。
マグネシウムは、まず軽い。アルミや鉄を筆頭に、われわれが日常的に使っている実用金属の中では最軽量のひとつです。そして折り曲げたり延ばしたりする展延性や、旋盤などで削る切削性に優れています。ようするに部品を作りやすいんですね。値段もそれほど高くありません。その利点を活かして、かつてはミッションケース、アップライト、ブラケット類そしてホイールなどがマグネシウムの出番でした。
ところがマグネシウムには大きな欠点があります。軽いのはいいけれど、強くないんですよ。本講座でたびたび出てきた比強度、比剛性ともアルミやチタンに劣ってしまう。鋳造や合金にすれば、アルミの鋳造品をしのぐことはできますが。
さらに燃えやすく、錆びやすいという性質もあります。粉になるといっそう燃えやすいため、かつて部品の切削加工中に火が出たという話もありました。軽いという一点には秀でていますが、他の部分はたいそうぜい弱で気難し屋なんですね、マグネシウムは。
ですから、レーシングカーのスピードがどんどんアップして部品への負荷が増大し、素材にも高い能力が要求されるにしたがい、ミッションケースはカーボンに、アップライトは鉄に、ブラケット類はチタンやアルミに取って代わられていき、今ではホイールくらいにしか使われなくなってしまいました。ホイールは部品としての容積が大きく、円形なので力を全体に分散しやすい。タイヤはゴムだから、力をある程度吸収してくれる。これならマグネシウムの欠点は帳消しにできるわけです。そのうえで軽いとなれば、マグネシウムこそ最適の素材。まだ当分、ホイールはマグネシウムの天下でしょう。ただし錆を防止するために、慎重な表面処理が要求されます。
さて、最初に述べた、マグネシウムが拍手をもって迎えられているモノ。それは携帯電話やノートパソコン、カメラのボディなんですね。これらのモノは小さくて軽いことも性能のひとつです。そのためにはボディ素材の厚みを極限まで薄くしたい。でもそうなると、プラスチックでは強度が保てないんです。そこでマグネシウムに白羽の矢が立ったわけです。マルチメディア、モバイルメディアのさらなる発展の一翼を、マグネシウムは担っていると言えるでしょう。
かつてはレーシングカーの中で酷使され、今では若い女の子の耳元で大活躍中。マグネシウムも「オレもずいぶん変わったもんだ」としみじみ思っているかな!?
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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。
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