モータースポーツ塾


「レーシングカーの素材」
第3回 「アルミニウム」


前回までのカーボンは近年花形の素材ですが、その影に隠れつつある気の毒な(?)材料があります。アルミニウムです。かつてはレーシングカー素材の代表的存在でしたが、技術の進歩でアルミの部品がどんどんカーボンなどに置き換えられているのです。とはいえまだまだ現役。アルミにはアルミの良さがあります。その魅力に迫ってみましょう。

アルミは窓サッシや鍋など日用品にも多く使われていることでわかるように、値段が安いことが大きな武器です。お金も性能のうち(笑)。また加工方法によっては同じ部品をいくつも、しかも簡単に作ることができます。

素材的な特性は軽いことと、加工がしやすくて強度に“ムラ”がないことなどが挙げられます。これはどういうことかというと、カーボンだと繊維の方向しだいでは、ある方向には強いけど別の向きに力がかかった時はもろい、なんてことが起きるのです。ある程度厚みのある塊状の部品を作る時、カーボンでは繊維を幾層にも貼って作るという構造上、予定外の力が加わった時、まるでパイの皮のようにはがれてしまう。一方、アルミは、力を一定に受け止めてくれます。壊れる時も急激に折れたりせず、じょじょに変形していったうえで「グニャリ」という感じで昇天します。その利点を活かして、アルミは部品を取りつけるブラケットや、壊れた部分の先端が鋭利にならずにドライバーを傷つけにくいことから、ハンドルのスポークなどに使われています。


そして、アルミがもっとも活躍する部分がエンジン関連。加工が楽でなおかつ放熱性に優れるので、形が中空で高熱にさらされるエンジンの部品にはピッタリの素材なんですね。シリンダーヘッド、ピストン、ラジエター、このあたりはアルミの独壇場です。


さて、アルミにはいくつかの加工方法があります。ひとつは鋳造(ちゅうぞう)といって、溶かしたアルミを型に流し込んで部品の形にするやりかた。言ってみればタイ焼きです。エンジンブロックなどはこれで作ります。タイ焼きですから、部品の量産に向いています。ふたつめは鍛造(たんぞう)。“鍛える”という言葉でわかるように、日本刀のように叩いて形にします。叩くうちに素材が鍛えられ、強度の高い部品が作れるのです。強引にたとえるなら、こねては何度も打つ、モチツキでしょうか。エンジンの爆発を受け止めなければならないピストンなどはこれです。そして切削(せっさく)。塊を刃物で削って形にするやりかたです。これまた強引ですが、さばかれて無駄な部分を落とした刺し身、かな。ブラケットなどはこれ。他にも切り抜いたりプレスしたりトコロテンのように押しだしたり、さまざまな方法があります。

先ほど書いたように、アルミはかつてレーシングカーに多く使われました。モノコック、ウイング……、ボディーをアルミにしたツーリングカーもありました。それらはカーボンになりつつありますが、アルミは何といっても昔からの友達。今でも現役でがんばっているのを見ると、なんとなくうれしいもんです!?

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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。


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