第2回「カーボンでモノを作るには」
前回、ざっとカーボンファイバーの特質を並べてみました。今回は具体的に、どうやってカーボンで部品を作るのかをお教えしましょう。モノはカーボン界の花形? モノコックです。
まずは型作りから。カーボン製品は張り子細工のようなモノですから、元となる型が必要なんですね。この型作り、昔は手作業でやっていたのですが、今ではコンピューターという便利な相棒がいます。画面上で図面を引き、そのまま実際の形にできる“CAD/CAM(コンピューター支援設計/工作)”というシステムがあるんです。これでケミカルウッドという型作りに適した工業用素材を削り、オス型と呼ばれる大元の型を作ります。
オス型ができたら、その上からカーボンを貼っていきます。これで完成というわけじゃありませんよ。このカーボンは、メス型という凹形状の型になるのです。これにカーボンファイバーを貼って、後述する工程を経たモノが、最終的な完成品となるわけです。
切ったプリプレグを貼る作業は、これも前回述べたように完全な手作業。職人技です。強度計算で割り出した数値通りに繊維の向き、プリプレグの枚数などを、丹念に繰り返していきます。
プリプレグに染み込ませてある樹脂はエポキシ樹脂といって、みなさんも目にしたことがある一般的な素材です。“5分で強力接着! 2液硬化タイプ”なんてヤツですね。違う点は、常温では柔らかいままということ。貼りつけ作業しているそばから固まられてはたまりませんから。じゃあどうやって固めるのかというと、オートクレーブと呼ばれる圧力釜の中に入れて熱を加え、カチカチにするのです。プラスチックは熱に弱いイメージがありますが、エポキシは逆。熱を加えると固まる熱硬化型という頼もしいヤツがあり、プリプレグにはそれが使われています。
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このような工程を経て、ようやくモノコックが完成しました。けっこうメンドウでしょう? そうやって苦労して作りあげたカーボンファイバー・モノコックですが、いつまでも使えるわけではないところが泣けてきます。素材そのものの寿命はかなり長いのですが、レーシングカーの進歩は早く、使われる環境もハード。次々と新しいモノを作っていかなければ勝負にならないのです……。かくしてレーシングチームは今日も、ペタペタとカーボンを貼っているのでした。 |
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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。
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