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第1回 カーボンファイバー
みなさん、空力の話はいかがでしたか? 今回から、レーシングカーに使われる素材の話をしていきたいと思います。みなさんの身の回りにあるモノからロケットに使われるモノまで、レーシングカーは実に多彩な材料で構成されています。それを知ることでレースをより身近に感じたり、あるいはその逆にレースのすごさに驚いたりしていただければ幸いです。
第1回目はカーボンファイバー・リインフォースド・プラスチック(炭素繊維強化樹脂=CFRP)を採りあげましょう。通称では「カーボン」とか「カーボンファイバー」と呼ばれている素材です。ここ10数年のレーシングカー・テクノロジーに劇的な革命をもたらした素材です。今やコレなしでは、レーシングカーはありえないと言ってもいいほど。
カーボンはそもそも1980年代初頭に、F1の世界に導入されました。それまでアルミニウムでできていたモノコック・シャシーを、当時航空宇宙産業で使われていたカーボンに置き換えたのがはじまりです。
メリットは、重量あたりの強さが、アルミや鉄など他の素材に比べてずば抜けて高いということ。同じ強さなのに軽くできる、あるいは同じ重さならより強くできることになります。軽さと強度の両立が求められるレーシングカーの骨格、モノコック・シャシーにはうってつけの素材だったんですね。
カーボンはまた、設計の自由度が高いのも魅力のひとつ。カーボンで何かを作る時は、張り子細工のように型にカーボンファイバーを貼ってそれに樹脂を染み込ませ、固めて形にします。ですから、ファイバーの貼り方などをアレンジすることで、ここは強くここはしなやかにといった調節が自由自在なのです。サスペンションの付け根などに、あらかじめ金属を埋め込んだりすることもできます。
そんなカーボンですが、デメリットもあるんです。たいへん強い素材なのですが、強度の限界を越えると、曲がったり延びたりせずにいきなり「バキッ!」と壊れてしまうのです。また、コストが高い。型にファイバーを張るという工程が通常ではなかなか自動化できず、人間の手を借りなければならないためです。
一方で、作り方次第では曲げに強くしなやかな状態にすることもできるのがカーボンのフレキシブルなところ。それを生かして、最近では一般の工業製品にもカーボンが進出してきました。代表的なモノでは釣り竿、ゴルフクラブのシャフト、テニスラケットなど。いずれも、強さとしなやかさの両方が求められるモノでしょう?
僕は釣りが好きなので、釣り竿の話をしましょう(笑)。あの世界では、「○×名人作竹竿」という逸品が存在します。それは素晴らしい作品なのですが、できあがるのに何年も待ったり、折れてしまったら替えが効かないといったデメリットもある。そこでカーボンの出番です。その竿の特性をシミュレートできれば、同じモノが何本もできてしまう。先ほど自動化できないと書きましたが、それでも名人が素材を寝かせてじっくり作るのに比べれば、ずっとオートマチックに、いくつも作ることができるんです。
そういった、モノの特性ごと使う場所ごとに変幻自在、臨機応変。デザイナーのひらめきをそのまま、しかも何度も形にできるとでも言ったらいいでしょうか。それがカーボンの大きな武器なのです。
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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。
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