モータースポーツ塾


「レーシングチームの時間割」
第9回 なんでこうなるの!? 不意のトラブル

レースが無事にスタートしてホッとひと息。タイヤ交換まではドライバーのガンバリにひとまずまかせて……、といけばいいんですが、レースってヤツは水物。突然のトラブルやアクシデントがいつ起こるかわからないんですね。どう対処したらいいんでしょうか。

フォーミュラマシンの場合、実は対処法はないと言っていいでしょう。とにかくシャープでデリケート、言ってみればサラブレッドのようなモノですから、トラブッたらまず一巻の終わりです。ですからレースが始まる時点で、何かあったらそのレースはおさらばであり、ギリギリの所に我々はいるんだという自覚と緊張感、覚悟をチーム全員が持つこと。これが大切です。

たとえば接触でサスペンションアームがちょっと曲がってしまったが他は大丈夫なようだ……、なんて事態でも、レースは難しい。いったん曲がった場所は弱くなってしまいますから、その後折れたりもっと曲がったりして危険なのです。そういった接触ではタイヤを痛めている可能性も高い。もしゆっくり空気が抜けていく“スローパンクチャー”ならピットインして交換しますが、一気に空気が抜けてしまったらダメです。




3輪走行で戻ってくれば? とお思いでしょうが、前述したようにデリケートなフォーミュラマシンでは到底不可能なんですね。路面とこすれてアンダーパネルが減ってしまうと、車高ルール違反になる恐れもあるし。いっぽうGTカーの場合は、3輪走行になっても路面とフロアが接触しない構造にすることがルールで決まっていますから、ピットへ戻ります。フェンダーがあるので、パンクしたタイヤが他の部品を傷つける恐れもフォーミュラよりは少ないですし。

トラブルになっても走り続けるケースもあります。たとえばウイングの翼端板やフラップなどの小さな部品が外れてしまったケースなど。もちろんハンドリングなどに影響を及ぼしますが、ピットインして交換したらタイムロスになりますから、レース距離の短いフォーミュラ・ニッポンなどではとうていリカバーできません。

というわけでそのまま走っていると不思議なことに、ついている時より速かったりする。おいおい、何のために予選からアレコレ悩んでセッティングしたんだよ!? なんて気分になってしまいます。そういう時はレース後ドライバーに、「あれだけ速かったんだから、次からはウイングなしで走っても大丈夫だよネ!」なんてジョークを飛ばしたりして!? まあ、マシンの性能を超えた部分でさっき言ったような緊張感がドライバーを速く走らせていたわけですから、悪いことではありませんが。




不運にもリタイアを強いられた場合、レース・オフィシャルがリタイア届なる書類を持ってきます。正式にリタイアしたか否かで、止まったマシンに手を触れていいかなどオフィシャルの対応が違ってくるからです。ため息まじりに書類を受諾。もう2度とこんな紙は見ないぞ!


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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。


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