モータースポーツ塾


「レーシングチームの時間割」
第4回 タイヤがなきゃ始まらない

前回の予告どおり、今回はタイヤのお話をしましょう。エンジンがかかっても、タイヤがなければマシンはたとえシューマッハでも動かせません。

タイヤの準備は、レーシングチームだけではできません。タイヤを供給するサプライヤーとの共同作業になります。フォーミュラ・ニッポンは現在、ブリヂストンのワンメイク(1メーカーだけがサプライヤーを務めていること)ですから、ブリヂストンが全チームのタイヤ関連業務をおこなっています。チームが持ち込んだホイールにタイヤをはめ、ホイールバランスを取ったりするのが作業内容です。




たいていの場合、午後1時にブリヂストンのサービスが始まります。これがちょっとした“レース”状態。どのチームも先を争ってホイールを預けるのです。というのも、全チームが持ち込むホイール本数は、300本を軽くオーバーしてしまうからです。作業は先着順ですから、もうおわかりですね。のろのろしているとタイヤをもらえるのが夕方になってしまい、その後チーム側でも作業がありますから、夕飯にありつけなかったりするわけ。これは辛い!

使うタイヤの種類はスリックとレイン、その中間のインターミディエイトの3種類。それぞれ何セットづつ用意するかはレースや天候によって異なります。現在のフォーミュラ・ニッポンのルールでは、1レース期間中に1台のマシンが使っていいスリックは4セットすなわち16本と決まっています。




さて、タイヤが仕上がってきました。ところがこれをマシンに装着して、ハイOK! とは行きません。せっかく入れてくれた空気をいったん抜いて、窒素ガスでふたたび膨らませるのです。最初に入っている空気は、タイヤをホイールにはめるために必要最低限必要なもの。しかし普通の空気は温度変化で体積が変わりやすく、シビアなエア圧キープに向きません。そこで、比較的安定している窒素ガスに取り換えるわけです。もらってきたスリックタイヤ16本、2カーチームなら32本の空気をまず抜き窒素を充填。1回ではまだ空気が中に残っていますからまた抜き、もう1回窒素を入れます。

あんな太いスリックタイヤの空気を、細いバルブから抜くわけですから実に手間のかかる作業。ほかのスタッフがピット設営をしている間ずっと、タイヤ担当はひたすら空気入れです。さっき言った「作業が遅れると夕飯にありつけなかったりする……」というのはこのことだったんです。




こうして下ごしらえの終わったタイヤを、いよいよマシンにつけましょう。レーシングカーのタイヤは“センターロック”と言って、乗用車のように何本かのボルトで装着するのではなく、真ん中にデッカいボルト/ナットが1個あってそれで取りつけます。さらにホイールの裏には何本も穴があり、その穴に、マシン側のハブについた“ノックピン”というフロント3本、リヤ6本の棒が入ってがっちり固定されるわけです。装着にはインパクトレンチとかホイールガンとか呼ばれる、窒素ガスでタービンを回してナットを締め込む工具が使われます。

これでマシンは動かせますよ! と思ったらドライバーがいないぞ。お〜い!



第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回第9回第10回第11回


※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。


モータースポーツ塾トップページに戻る


Copyright(C) 2006 Yurataku-ya. All Rights Reserved.