平成モータースポーツ塾


「レーシングチームの時間割」
第11回 毎回生まれ変わるマシンとボクら

前回書いたように、レーシングカーというものはひたすらメンテナンスの嵐です。完成車になって走っている時間のほうが短いくらい? 整備しまくるのです。さてレースが終わってチームのガレージに到着。マシンをどうするか紹介しましょう。

まずは分解です。それもただバラすのではなく、ひとつひとつのパーツやアッセンブリーを目視したり触ったりしてチェック。今回はどこをどこまで、どうバラすかのチェックリストを作って、効率よく進めていきます。レースでダメージを受けたところなどは、当然、重点的かつ入念に作業します。ですから、いつも決まったパターンがあるわけでなく、その時の状況に応じて事後メンテナンスのやり方や手間は変わってきます。




もちろん、毎回必ず行なう作業もあります。サスペンションのアライメント調整とか。レースに出かける前にチェックしたときと同じ状態を保っているか、同じアライメント器具を使ってチェックします。それからエンジンも取り外し、エンジンメーカーへと送ります。毎回のことなので“通り箱”という専用ケースがあり、これに収めて宅急便で送るわけです。ちなみにエンジンとは切っても切れない関係のラジエターなど冷却系パーツやミッションは、チームの管轄なのでわれわれが分解時に点検します。

パーツによっては、疲労や破損などを疑わなければなりません。どうやって調べるかご存知ですか? 目で見る“目視”は当然ですが、クラックチェックまたはカラーチェックという方法を使うのです。パーツを浸透液というモノに漬け、そのあとで現像液に浸すと、キズやヒビの入った場所がくっきり浮き上がって見える仕組みです。F1チームでは非破壊検査と言って、パーツをレントゲンみたいなモノにかけ、内部の状態まで調べるようですが、日本のレースではそこまでやるケースは稀かな。




疲労もしくは摩耗しやすいパーツは、上記のチェック法で異常がなくても定期的に交換します。代表的なところではドライブシャフトやクラッチ。どれくらいのサイクルで換えるかは、チームのカンに負うとことが大きいですね。物理的にまだ使えるのにどんどん換えちゃったら、サイフがね……!? こういった作業は、たいてい次のレースやテストの直前までやっています。急いで作業したからといって、市販車の工場みたいに近所の道路で試走、なんてことできませんから!

さあ、新装あいなったマシンが組み上がりました。レースは目前に迫っています。生まれ変わったボクたちのマシン、次はどんな走りを見せてくれるんだろう。頭の中ではトップでチェッカーを受けるシーンが鮮やかにイメージされています。それを現実のものとするために、われわれモーターレーシング・ピープルは明日もサーキットへと急ぐのです。そしてその晴れ姿をみなさんの目に焼きつけてもらうために。では、サーキットで会いましょう!




今回で「レーシングチームの時間割」はおしまいです。おつき合いいただきありがとうございました!


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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。


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