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第1回 レースの所帯道具
みなさんこんにちは! 今回の講座は、「レーシングチームの時間割」と題して、ひとつのチームがサーキットに到着してレースを終えるまでのアレコレを、フォーミュラ・ニッポンを例に紹介したいと思います。
なに、レースだからといってものすごく特殊なことをやっているわけではありませんよ。朝起きて歯を磨いて仕事や学校にでかけるのと同じ……、というのは大げさだけど、とにかく、僕のように長年レースに携わっている人間にはそれくらい日常的なことです。
まず、サーキットへ向かう人員を紹介しましょう。当たり前ですがドライバーと監督。それからエンジニア、チーフメカニック、メカニック、マネージャー。このあたりまでが、いわばチームの“社員”。これにエンジンやタイヤサプライヤーが派遣するエンジニア、パーツメーカーの担当者、キャンペーンギャルやスポンサー筋を担当する広告代理店などが合流して、“○△×レーシングチーム”の体をなすわけです。エンジニアやメカニック、外部人員などの数は、チーム体制などによってまちまちです。
これらの所帯が、基本的には現地集合の形でサーキットに集まります。本拠地が静岡県御殿場市にある僕のチームの場合、菅生など東北のサーキットへは車で移動します。ドライバーや監督は自分の車、他の人たちはチームや会社のワゴンなどに分乗するケースが多いかな。西へは、鈴鹿から岡山県のTIサーキットくらいまではクルマ。山口県のMINEサーキットや熊本県のオートポリスは、さすがに飛行機+レンタカーでの移動となります。
人間はこれで揃いました。しかし肝心のマシンや機材は? これは通称トラッキーと呼ばれる運転手さんがトレーラーか大型トラック、いわゆるトランスポーターというヤツを運転して運んでいくんですね。レーシングチームの機材は膨大な量ですから、事実上これ以外では運べません。どんな遠くへも、ひとりで黙々とトランスポーターを走らせるトラッキー。チームのメインドライバーは、実は彼らだったりして!?
という冗談はともかく、“膨大な機材”と書きましたが、どれくらいかを列記してみますね。言ってみれば、工場丸ごと引っ越してくる感じです。マシン、スペアパーツ、ホイール+タイヤ、スペアエンジン、ボディカウル、ウイング、オイルなど油脂類、工具、工具箱、発電機、コンピューター、修理用パーツ、チームウェア類、レーシングスーツ類、食料(現地調達はおやつくらいで、基本は“箱買い”)、ピット裏に設営するテントやイス類などなど……。11トン車満杯になる!
これらを金曜日の朝到着するやいなや、総出で荷下ろしして設営するわけです。みなさんの身近なたとえで言えば、オートキャンプでしょうか。なんというか、カレーとかバーベキューの材料がマシンに代わったようなもの!?
さあ、これで戦いの前の、さらに仕込みの段階が完了しました。明日からのいい走りを夢見つつ、本日はおやすみなさい!
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※この講座は1998年〜2000年まで、本田技研工業のホームページに連載されていたものを再編集したものです。
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