「風洞・風の研究所」
「風洞」とは・・・
風洞(ふうどう)とは、目に見えない「空気の流れ」によっておこる現象を調査研究するための装置です。 風洞実験では、測定部に置かれた物体に作用する「抗力」、「横力」、「揚力」などの空気力の測定に使用されます。小型のピトー管を使えば、物体周りの流速分布を知ることもできます。また物体表面やその近傍の圧力分布を調べることもできます。さらに煙やレーザーを使って流れを可視化し、流れの大まかな構造を観察・記録することもできます。 風洞では、実物そのものを計測することもありますが、この場合は大型の風洞設備が必要となります。そこで流れの相似性を利用して実物を縮小したモデルを使った、いわゆる模型実験が行われます。 弊社ではこの模型実験を主として、レーシングカーをはじめ、各種の計測を行っています。 模型実験はコストセーブ、開発時間の短縮、取り扱いなど、多くの点でメリットがあります。 最近では、コンピュータの発達によってCFD(数値流体解析)が広く利用されるようになってきましたが、その計算結果を風洞実験によって確認するためにも利用されます。 風洞の利用分野は自動車、航空宇宙のみならず、翼型等の基礎研究から風車、建物、構造物など、空気の流れに関わるすべてにわたるといえます。 風洞設備 レンタルについて 風洞実験 実績例紹介風洞実験設備について
レーシングカー開発のために導入した、1/5~1/4スケールの小型風洞設備です。最高速度40m/sのムービングベルトを備えた開放型の計測部をもち、モデルに接近して流れの観察を行うことができます。自社開発のPCプログラムにより計測作業が自動化され、初めての方にもたいへん使いやすいシステムになっています。 車両モデルの計測器の他に、汎用の空気力計測装置として6分力式の荷重計測器も用意しています。この6分力荷重計は360°回転可能なターンテーブル上に設置されているので、風向変化に対しての空力特性を計測することができます。 また、計測データはお客様が持ち込まれたPCに直接取り込まれるため、本システムにはデータが残らず、機密上の管理も容易です。ムーンクラフト風洞実験設備の特徴
回流式、小型モデル用風洞
社内ではレース車両の開発に使用中
各種実験のために一般向けにレンタル対応中
ムービングベルト方式(3分力)と固定床方式(6分力)
自動運転、自動計測による省力化
社内製ソフトウエアによるカスタマイズ可能
モデル準備・工作室が付属
風洞実験設備の詳細
ムービングベルト方式(3分力+タイヤ抗力計測)
この計測方式では、計測モデルを上方及び前方にワイヤーで支持しており、これに接続された歪みゲージでモデルに作用する荷重の変化を計測します。また、タイヤはそれぞれ回転できるように独立支持されており、ムービングベルトの作動に追従して回転し、実際の走行時と同様なタイヤ周りの状態を再現しながら、タイヤに作用する抗力を計測します。- 試験対象
- 自動車2輪車船舶風車その他
レーシングカーの実例
2015年:SUPER GT GT300クラス参加車両固定床方式(6分力計測)
この計測方式では、計測部の床面中央に+/-180°回転可能な6分力計測機を設置し、X、Y、Zの3軸及び各軸周りのモーメントMx、My、Mzを同時に計測しています。- 試験対象
- 車両2輪車風車ウィング飛翔体スポーツ用品その他
6分力計測機
ムーンクラフト株式会社 / 風洞実験設備の概要
- 名称
- ムービングベルト付小型風洞
- 製造年
- 1986年設置、2004年改修、2014年自動化改修
- 製造会社
- 自社設計製作
- 風洞の特色
- 位置出し完了後の、モデルの着脱が容易 風洞制御、データ処理、モデル工作を行う場所が、測定部と同じ室内にあり、流れの観察・モデル形状の改良が容易 計測データのセキュリティを確保
- 基本仕様
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吹出し口寸法 : 幅1.0m×高さ0.7mの長方形 測定部長さ : 1.45m 風速範囲 : 1.5m/s~40m/s
- 風洞形式
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風路形式 : 回流単帰路、横置き 測定部境界 : 自由壁形 ノズル絞り比 : 5
- 試験能力
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模型寸法・重量 : 最大長さ1200mm程度、最大重量50kg 地面模擬 : ベーシックサクション付きムービングベルト装置 可能な試験項目 : ムービングベルト方式での3分力+各タイヤ抗力計測、または固定床方式での6分力計測、タフト・スモークなどによる可視化実験 変角範囲 : ピッチ: プログラムした任意のピッチ角で自動計測可 ロール : 任意 ヨー : 0°~5°程度 気流温度制御範囲 : ダクト内無し、ただし計測室には空調設備あり。
- 計測システム
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空気力計測 : 単軸ロードセルによる3分力+各タイヤ抗力計測、または6分力ロードセルによる計測 風速計測 : ピトー管および可変リアクタンス式圧力変換器 圧力計測 : 微差圧センサーによる データ処理 : デジタルサンプリング、生データは保存 特記事項 : 運転中に、モデルへの接近が容易
- 特色
- 計測は専用PC・プログラムにて設定値に従い自動制御運転。 計測データはクライアントPCへ保管(Excel対応)。計測データグラフを自動作成、データの後処理も可能。 モデル移動設置用のリフター有。 モデル工作室が隣接し、モデルの改造、変更に対応可能。
風洞実験設備スケジュール
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CFD・数値流体解析について
近年のコンピューター性能の向上は凄まじく、それに伴いエンジニアリングにおいても、コンピューター上で仮想的に性能予測や性能試験等を積極的に行うようになってきました。ムーンクラフトの空力開発にも、先進的な仮想的技術を積極的に取り入れております。
CFD(Computational Fluid Dynamics) 自動車やレーシングカーの空力開発に大きなインパクトを与えたのがCFD(数値流体解析)です。 CFDでは流体の支配方程式である「ナビエ・ストークス」方程式をコンピューターが解ける形としてモデル化を行い、それを解くことで、車体の周りの流れ、圧力分布などの物理量を可視化することができます。CFDはその本質(支配方程式を解くこと)から、原理的に「制限」のないツールでもあります。例えば、流体の「エネルギー方程式」を追加して解くことで、熱の影響も計算に考慮することができます。また、計測器等による測定への影響などもありません。このように、CFDを活用することで、従来の方法では計測できなかった、より詳細でローカルな情報を得ることができます。 ムーンクラフトでは、SUPER GTに参戦中のSGT-EVORAの空力開発に積極的にCFDを活用、その性能向上へと繋げております。