前回のブログでは紫電77レプリカ製作のシャーシについて紹介しましたが、今回はボディカウルについての作業を紹介したいと思います。
発掘編で紹介した紫電77の成形型から、フロント・センター・リヤのカウルができました。
カウル全体のシルエットはカッコ良く、ルーバーも迫力アリ!
40年前、紫電77を見た人たちが受けた衝撃は凄かったはずです。
当時のレーシングカーのカウルは現代と異なりガラスマットによるFRP製。
今回のカウルももちろん同様の製法のため、カウルがとにかく重い。
普段カーボンプリプレグを使ったCFRP製品製作に慣れているスタッフにとっては尚更です。
この時点の重さはフロントカウル12kg、センターカウル20kg、リヤカウル24kgあります。
ちなみに・・・
写真は既にルーバーが完成していますが、この大量のスリット加工作業もなかなか根気のいる作業です。
フロントカウル、センターカウル、リヤカウルを互いに正しいと思われる位置関係で定盤に設置。
現状でのカウルの合いを確認します。
40年野ざらしにされた型から成形しただけあり、全てのパーツが少しずつ歪みカウル同士の合いはとても悪い状態です。
目立つところでは左右でリヤフェンダーの盛り上がりが異なっており、また本来なら直線のはずのリヤフェンダーからウイングにかけての翼端板部分も大きく外へ反っています。
センターカウルとフロントカウル、リヤカウルとの合いも良くありません。
下記の写真の様に合わせ面に段差が出来てしまいます。
作業に入る前に、まずは3次元測定器「FARO」でスキャン、カウルの計測をしました。
各計測ポイントでのデータを合成してPC上でカウルを組み立てます。ポイントごとに異なる色で表示されるためアバンギャルドなカラーリングの紫電ができあがりました。
このカウルデータをもとに、前回『シャーシ編1』で紹介しましたフレーム設計の最適化を行いました。
ここからは実際の作業に入ります。
まずは変形し反っているリヤウイングの翼端板部。
翼端板を正規の角度にするため、コンパネで治具を作成。
治具を付けると変形した翼端板の曲がりがよくわかります・・・
曲がってしまった翼端板は一度縦方向へ細く切り込みを入れ、真っ直ぐな形に矯正してからFRPで再度接合していきます。また、左リヤフェンダーが右に比べて痩せているため、右側と同じ形状になるようパテで修正しました。
発掘の際に型の紛失が発覚した、左のエアインテークダクト。
こちらは右側の製品を参考に製作しました。
センターカウルをシャーシに合わせます。
まずはメインフレームやロールケージと干渉する部分をカット。カットしてしまったバルクヘッド部は新規にパーツを製作、追加することで形成します。
下記の写真を見ると、今回使用するシャーシVIVACEと紫電のセンターバルクヘッドの位置のズレが良くわかります。紫電のバルクヘッドが80㎜、VIVACEより前方にあるので、この段差を埋めるためのカバーをロールゲージとの位置関係を考えて製作しています。
こちらはドアになります。
カウルと同様にドアもFRP製ですが、こちらも反りが大きくこのままではセンターカウルと合いません。40年の重みを感じます…
切込みを入れて柔らかくした上でセンターカウルに合うよう曲げて矯正、FRPを再度積層しました。
センターカウルに当時の紫電77デビュー時と同じドアヒンジを取り付けました。当時の紫電77はガルウィングドアで、ヒンジの一部はルーフから飛び出していました。現代では見ない取り付け方ですが、当時のレーシングカーのレプリカであることを重視し同様の手法を取りました。
また、ドアのロック機構も当時と同様の構造を踏襲しました。
センターカウル側の筒にドア側のロッドがささり、ドアレバーをひねるとロッドが抜けてドアが開くというシンプルなもの。ただし、受けとなる筒の内側をテーパーにすることで当時の構造を守りつつロックの精度を大きく向上させています。
それぞれのカウルの面がなめらかに繋がるよう面出しをしました。紫電77の大きな特徴の一つである、ボディ側面からリヤウイングにかけての伸びやかな曲面が綺麗に出るよう、カウル同士やドアの面の合いやチリは入念に仕上げられています。
作業はまだまだ続きます。
最後に・・・
こちらはフロントカウルのみを装着した製作中の1コマ。
フレームの形状からボディのシルエットが想像できます。
食べたあとの焼き魚のようですね!!
作業は続き、次回はシャーシ編の続編です。