Bridgestone World Solar Challenge 2023〈第1回〉

今回の記事は開発部のMが担当します。
10月に2年に一度オーストラリアで開催されるBridgestone World Solar Challenge(BWSC)に東海大学ソーラーカーチームのエンジニアリングアドバイザーとして参加してきました。BWSCはオーストラリアの北部のダーウィンから南部のアデレードまでの3,000kmの道のりをソーラーカーで競うレースです。ソーラーカーはレース中に太陽電池で発電する電力とスタート時に搭載したバッテリー(交換不可)の電力だけで3,000kmを約5日間で走破します。東海大学のソーラーカー「Tokai Challenger」は東海大学と東レ・カーボンマジックが共同で設計製作をしており、私自身は前回の2019年大会の車両からプロジェクトに携わっています。この記事ではBWSC2023でのレースの様子をお伝えしたいと思います。

・車両整備(10/11~21)
10月のはじめ、日本で製作したソーラーカーは航空便でオーストラリア南部のメルボルンに到着し、北端のダーウィンまで4,000kmの道のりを東海大チームの先発隊がトラックで北上して運んできます。ダーウィンでは予選が行われる「ヒドゥンバレーサーキット」が活動拠点になり、各チームがピットで整備ややり残した作業を行ったり、互いの車両を見学したりして過ごします。私は14日に到着し、チームに合流しました。東海大チームでも未完了のまま日本から持ち込んだ部品の取付けや、輸送中の熱で反ってしまった部品の修正、レース中に使用するサポートカーへの無線設備の取付けなど、色々な作業を行いました。夕食にレストランへ行くと見知らぬ一般のお客さんから「どこのチームだ?君らのソーラーカーは何km/hで走るんだ?」と訊かれることも、しばしばあります。「大体100km/hくらい、天気や作戦によってはもっと出す」と答えると、「ソーラーカーはそんなに速く走れるのか!」と驚いてくれます。ドヤ顔です。

                     整備の様子

・ヒドゥンバレーテスト(10/16~18)
サーキットでは各チーム順番に1日30分間のテスト走行ができます。ここで車両各部の動作確認や予選に向けた練習を行います。サインガードに立って自チームと他チームの音を聴き比べたり(一般に静かなほど空気抵抗が小さい)しながら今回はどこのソーラーカーの抵抗が小さいか、などと考えていました。

           ヒドゥンバレーサーキットを走るTokai Challenger

・静的車検(10/17,18)
各チームのソーラーカーがレギュレーションを満たして作られているか確認するため、4日間に渡って「ダーウィン コンベンションセンター」にて車検が行われます。東海大チームは車検2日目の17日が指定され、9割の項目をその日にクリアし、ホーンの交換と追加の書類提出で翌日には車検合格となりました。また、車検では重量測定があり各チームの車両重量を知ることができます。今回の「Tokai Challenger」はバッテリーを除いた車体で前作の122kgから106kgへと16kgの軽量化が達成されていました。これには前大会以後に材料が進化し、より高強度高弾性な炭素繊維を使用し、より薄い織物に織り、それをプリプレグ化した材料が登場したことが大きく寄与しています。今回、東海大チームは36kgまでの搭載が許されるLi-Feバッテリーを採用したため、20kgまでとなるLi-Poバッテリーを採用した大多数のチームよりもバッテリーだけで16kg重いことになりますが、車体が最軽量だったため車両重量としては2番目に軽い142kgに収まりました(最軽量は137kg)。これは車体作りに協力してきた私にとっても嬉しいポイントです。

               コンベンションセンターでの車検

・公道テスト(10/19,20)
車検に合格したことでダーウィンの北東にあるガン・ポイントと呼ばれる町の公道でテストができるようになります。レースペースの決定や速度域に合ったモーターの選択のためには、車の現地の路面での電力消費を知る必要があるため、公道テストは非常に重要です。19日は強風のために電力消費が多くなりましたが、翌日は満足な距離を走り、電力消費も優秀だった2019年型と比べても良い値であることを確認して終わりました。


・予選(10/21)
決勝レースでのスタート順を「ヒドゥンバレーサーキット」での1ラップのタイムアタックで争います。レースが始まれば、序盤は片側2車線の区間が続き追い抜きが容易なため、必ずしもトップである必要はなく一桁の順位を獲れればOKです。ソーラーカーは低転がり抵抗のタイヤを履き、今年は特に空気抵抗と転角優先の設計のために重量配分が極端なフロントヘビーで、不用意なコントロールは禁物です。例年アタッカーを務めている総監督の先生が無難にまとめ2′10.88で34台中の7番手を獲得しました。
翌日からは決勝レースが始まります。ピットの平滑な床でできる最後のアライメント調整や、ボディーやキャノピーの微妙な段差をなくすチリ調整など、レースに向けて万全の体制を整えます。

                  予選タイムアタック

                     最終整備

〈第2回に続く〉

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