検証『求心力 ウイング』

レースの世界では空力装置の可動は一切禁止されているのですが・・・
今回はこんなアイディアのクルマを見つけましたので紹介したいと思います。
 
こちらはデンマークの「ZENVO TSR-S」というスーパーカー。
このクルマ、コーナーでリアのウイングが倒れます。

(※画像は Carspotterjeroenm facebookページより)

 
 
どのようにコーナーでウイングが倒れるのか、こちらの動画をご覧ください。
 

(動画:Youtube – Carspotter Jeroen より)

 
 
また、このクルマのウィングについて海外の技術解説ユーチューバーが、解説をしています。
(解説は英語になります。)

(動画:Youtube – Engineering Explained より)

 
 
そして・・・
 
この2つの動画を見たムーンクラフトスタッフが冗談なのか本気なのか気になり、このウイングについて検証をしました。
 
今回はその検証結果を紹介したいと思います。

このユーチューバーの解説者は、
 
「ウイングを傾けることにより空気力の30%が求心力になり、ダウンフォースの減少は わずか3%に過ぎない。
さらに、ウイングが高い位置で求心力を発生するため、左右の荷重移動が少なくなる。」
 
というような解説をしているようですが、空気力の30%を求心力にするためのウイングのロール角は17.5度になります。
 
sin17.5度=0.3
  
この時ダウンフォースはcos17.5度=0.95で5%の減少。
  
仮にウイングに、ダウンフォースが100Kg発生するような中高速コーナーを、水平ウイングを持つ1000Kgのクルマが1.3Gで走行できるとするなら、このクルマのタイヤの摩擦係数は
  
{(1000×1.3)÷(1000+100)}=1.18
  
同じ条件で求心力ウイングでは
  
[{1000+(100×0.95)}×1.18+{100×0.3}]÷1000=1.32G
  
1.3Gに対して1.32Gなので、取り分は1.5%
  
これに荷重移動の減少分の取り分が加わります。
重心高さを450mm、ウイングの取り付け高さを1000mmと仮定すれば
  
水平ウイング車のローリングモーメント 1000×1.3×0.45=585Kgm
  
求心力ウイング車のローリングモーメント (1000×1.32×0.45)-(100×0.3×1.0)=564Kgm
  
車のトラックを1.6mと仮定すると、元々の荷重移動が
  
585Kgm÷1.6m=366Kg
  
一方、求心力ウイング車は 564Kgm÷1.6=352Kg
  
結果的にインサイドのタイヤに+14Kg、アウトサイドのタイヤに-14Kgとなります。
  
この14Kg分がどの程度の取り分を持つかは、タイヤの詳細データが必要なため不明。
  
最終的に、理屈上高速域で2~3%の取り分が期待されます。
  
話題提供の際の理屈の裏付けだけはありそうです。

 
以上、ムーンクラフトスタッフの検証でした。
 
 
 
最後に由良がこのウイングを見た際の感想も紹介したいと思います。
 
「前のクルマがコーナーでウイングが倒れたら、アッとビックリ、壊れちゃったのかと思い思わずブレーキしちゃうし、なにより恰好が不細工なのでダメですねー」
 
ウイングだけでもいろんなアイディアがあって楽しいですね!!

follow us in feedly
Pocket

記事一覧に戻る
 ↩︎ 

SHARE

Pocket

follow us in feedly

MOONCRAFTのサービス

ムーンクラフトのハイレベルな風洞実験サービス

2014年、自社開発のPCプログラムにより計測作業が自動化されました。風洞のプロフェッショナルが、より精密で信頼のあるデータを導きます。

ムーンクラフト風洞実験設備へ
Page Top
ムーンクラフトのハイレベルな風洞実験サービス