ウイングの不思議?

レーシングカーではダウンフォースを稼ぐためにウイングが必需品となっていますが、いったいどのような翼型を使えばよいのでしょうか?また、たくさんの翼型がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?

 

弊社の風洞実験室では、今まで数多くのウイング付き風洞モデルの風洞実験を行ってきましたが、これらの問いに対しては、レーシングカーに適したウイングがいくつか存在し、また翼型により性能の差があることを実験で確認しています。近年、3Dモデリングの環境が進歩充実してきましたのでウイングのモデルも精度よく製作できるようになり、実験により性能の差が明確に計測できるようになりました。(図1.)

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図1 各種のウイングモデル

また、弊社の風洞実験室も設備拡充を行い、6分力計を使ってウイング単体での性能を計測できるようになっています。弊社の6分力計測装置にはターンテーブル機構もついていますので、ウイングに斜めの角度をつけての性能計測も可能です。図2.は、地面効果もある程度考慮して比較的地面に近い高さで、翼端板も装着してウイングの計測を行っている様子を示します。これで車両にウイングを搭載した状況に近いデータが計測できるようになっています。

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図2. ウイングの性能計測風景

スケールモデルを使った風洞試験で、やはり配慮するべき点はレイノルズ数の影響ですが、弊社ではまずCd(抗力係数),Cl(揚力係数)などの空力特性がどの程度風速に依存するのかを調べています。風速を変えても無次元係数Cd、Clが変化しない速度領域に達していれば、その時のCd,Clをウイングの特性値として考えます。

次の図3.は、ウイングの特性が風速に依存することが分かる図です。
15m/sや20m/sではClが低めになっていますが22m/s以上の風速ではほぼ一定の値になることが分かります。Cdもやはり22m/s以上で一定になっています。したがって風速25m/s~35m/s程度の風速で実験を行えばよいことが分かります。このような風速域で、ウイングの角度をいろいろ変えて計測を行いうウイングの特性を計測し比較していきます。

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図3. ウイング性能の風速依存性

ウイング特性は文献資料により公表されていますが、それらのデータは2次元翼のデータなのでそのままでは使えません。実際にはウイングの翼巾は有限なので、アスペクト比(縦横比)に応じた補正を行う必要があるのと、翼端板の形状によって性能が変わってくるからです。今回の実験ではアスペクト比5程度の3次元翼のために揚力/抗力の比(揚抗比)L/Dがかなり小さく、おおよそ6程度の値になることが分かります。

ウイングの翼型ですが、NACAの技術データや、ほかの様々な公表データが見られますが、これらの翼型がベストであるとは限りません。それらを参考にしてモディファイを加えてオリジナル翼型をテストすると、オリジナル翼型の性能が良い場合もあります。GT300 SGT LOTUS EVORAのリヤウイングはムーンクラフトが開発したオリジナル翼型となっています。

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空力開発の手段として発展を遂げているCFD(Computational Fluid Dynamics)も併用していますが、リヤウイングの翼端板に関しての例をここではご紹介します。図4.は翼端板の後方の切り欠き形状の効果をCFDで検証した事例です。翼端板の後方切り欠きにより、ダウンフォースがわずかに増加する結果となっています。CFDのソフトウエアは弊社のレース活動をサポートしていただいているCRADLE社のSCRYU/Tetraを使用しています。

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図4. CFDを使って翼端板の形状比較

ウイング関連の補足として、レーシングカーのウイングでは “ガーニーフラップ”というデバイスが頻繁に使われます。これは、ウイングの後縁にL型の部品を装着するものです。航空機でも使用されることはあるようですが、レーシングカーでは非常に重宝されるデバイスと言えます。次回はこのガーニーフラップについてお話しします。

ムーンクラフト(株)
空力開発室

 

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