ムーンクラフトのスタッフブログで度々紹介しています「空力研究所の秘密」。
今回はFormula1の空力について、CFD(数値流体解析)を使って覗いてみたいと思います。
その中で、今回はリアウイングに関したトピックです。
F1のリアウイングですが、近年メインウイングやフラップにはあまり目に見える差はないものの、翼端板については年々その複雑さを増しています。
因みにスーパーGTの世界でも翼端板の開発はとてもホットな話題です。GT500は共通のリアウイングを使用していますが、GT300では寸法等規定はあるものの、ウイングプロファイルや翼端板の開発は許されています。
図1. Formula1マシンのリアウイング(2016年型)
昨年までのF1マシンは、翼端板の上部付近に横長のルーバーが開けられていました。(図1:赤丸部)
この位置のルーバーは20年程前から使用されているため、よく目にしますが、いったいどういう意味があるのだろうかと不思議に思われている方も多いのではないでしょうか。
下記の図2はCFDにて翼端渦を可視化した様子です。
左側2枚はルーバーあり、右側2枚はルーバーなしの状態での解析結果ですが、右側のルーバーなしの場合、強い渦が翼端板の上端で発生していることが比較からわかります。
図2.リアウイング翼端板周辺の渦の様子
(左:ルーバーあり、右:ルーバーなし)
それに対して、図2左側のルーバーありの場合はルーバーから排出された空気が翼端渦の生成を阻害しています。これによりウイング単体でのドラッグ値が約5%低減されます。
ただ、デメリットもあります。メインウイング上面の圧力の高いところから、周辺の比較的圧力の低い場に空気を流すため、翼端付近のウイング上面圧力は少し低下、つまりダウンフォースは少し低下します。
下記の図3は、リアウイング上面視 圧力分布(左側がルーバーあり、右側がルーバーなし)です。
ハッキリと変化の差を確認できます。(図3:左側 紫丸部)
ただし、ウイング全体としてL/D (ダウンフォースとドラッグの比)が向上するため、空力的に良いとされています。
図3.リアウイング上部視 圧力分布比較
(左:ルーバーあり、右:ルーバーなし)
ちなみに、この翼端板のルーバーは2019年のレギュレーション改定により姿を消すこととなりました。
空力開発陣はこの失われたゲイン(ルーバーでの増幅分)をCFDや風洞を用いて他領域のパーツを開発することにより取り戻し、より性能の良いマシンを作り上げるわけです。
今回はリアウイング翼端板についてでしたが、次回はフロントウィング🔗を予定しています。
今後も乞うご期待ください。
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