以前に紹介した境界層制御装置を改良しましたので、その効果をあらためて公開します。
(前回の空力研究所の秘密・境界層編は、こちらをご覧ください。)
今回の吸込み装置の改良ポイントは、可能な限りムービングベルトの直前で発達してきた境界層を吸い込むことにあります。図1.は今回製作した境界層吸い込み装置です。従来の吸込みは幅2mmのスリット2列で行ってきましたが、新しい装置では天板にパンチプレートを使用し、開口部は必要に応じてテープや薄いアルミ板を張ることにより面積を変更できるようにしました。
図1.境界層吸い込み装置
結果としては、従来型では境界層が10mm程度の高さで残っていたものが今回の装置でほとんどなくなってしまうほどの効果がありました。
図2.は前回の境界層の測定結果、図3.は今回の新しい測定結果です。今回は風速25m/s、吹き出し口から200mm下流の位置で境界層分布を計測したものですが、10mm以下の領域で速度分布が明らかに変わっています。
青い線の曲線は吸い込み装置とムービングベルトの両方を使用したとき、赤い線は吸込み装置だけを使用したとき、緑の線は吸込みもベルトも使用しないときの速度分布です。吸い込み装置だけの場合でも、境界層が薄くなっていることもわかります。現在は、境界層吸い込み装置の吸い込み量は一定となっていて、主流に対して吸い込みすぎの傾向があるので、次の段階として主流の速度に応じて吸い込みファンの回転数を制御し、吸い込み量も変動するように改良する予定です。
また、この他にも風洞設備の改良は逐次行っており、次の改良が実施済みです。
- タイヤサポートロッドの改良:従来から翼断面のエアロチューブを使用していましたが、さらに厚さの薄い翼型プレートを採用しました。これにより車体側面の流れへの影響を少なくしています。
- ベルト装置の低振動/低騒音化:ベルトの継ぎ目がベルト装置の振動や騒音の主な原因ですが、この継ぎ目部の段差が少ないタイプを選定することで低振動と低騒音を実現できました。
ムーンクラフト(株)
空力開発室