LES解析で明かす エアロフォイル(翼断面)のメリット

ムーンクラフトのスタッフブログで度々紹介しています「空力研究所の秘密」
今回は、CFD解析(Computational Fluid Dynamics)の中のLES解析(Large Eddy Simulation)で明かすエアロフォイル(翼断面)のメリットについてです。
 
下画像①と② 二種類の断面の支持柱形状(ウイングステーや空力付加物のステー等)があるとします。レーシングカーの速度域においてまた空力部品として好ましい、空気抵抗が少ないのはどちらでしょうか?
②は翼断面になっていますが、①の断面に比べると1.5倍ほどの厚さがあります。対して①はアルミ板を加工したような単純な断面形状となっています。
また実車使用を想定して先端はR10となっており翼断面としてはややいびつであることをご承知ください。

正解は②の翼断面です。
形状による抵抗の優劣を示すCd値は①が0.4 ②は0.08程度と約5倍の性能差が付いています。
 
では、なぜそこまで翼断面が優秀なのか?
CFDの可視化画像と動画を見てみましょう。
以下はそれぞれの形状をCFDにて非定常LES解析を行ったものです。(上図:①、下図:②)
 
なおこちらのCFD画像は、実際の走行状態を加味して5°の迎角を与えています。


渦管と呼ばれる“泡状”にみえる部分は物体と空気の間の摩擦を受けて乱流となっています。
上下を比較すると平板形状では先端から後端にかけて全面で乱流となっているのに対し、翼断面では後端に近いわずかな部分でのみ乱流となっています。
乱流域での摩擦力は層流域に比べて遥かに大きいため、ドラッグが低減される仕組みになっています。
 
以下の動画では渦管の発達と後流への影響を見ることができます。
平板に比べて翼断面では後流が綺麗に流れるようになっています。


 
これらはレーシングカーのエアロダイナミクスにおいては、以下のメリットとして繋がります。
・車体ドラッグの低減
・剥離が少ないことで姿勢変化による空力性能の差が少なくなる
・後流において失うエネルギーが少ないため、後流のエアロ部品の効きが良くなる
 
ちなみ下の画像のように直径1.3mmの円柱がこの翼断面と大体同じドラッグ荷重を示します。並べて見てみると如何に翼断面が優秀かよくわかります。

 
 
近年のF1マシンを見てみると前後ウイングピラーに始まり、バージボード周辺の支持部品、サスアーム類はすべてCFRP製の翼断面で構成されています。
身近なところで挙げると、ロードサイクル等ではエアロフォイルフレームが一般的になっています。

 
 
SUPER GT GT300クラスにおいても空力部品に限らず、翼断面は多用されており、
例えばサスペンションアームも翼断面をしたスチール部材を用いています。
 
また翼断面のCFRP部品は高い成形技術が必要となりますが、弊社では様々な成形技術を駆使して複雑な形状をCFRP化することを得意としています。

ムーンクラフト(株)
空力開発室

 
 
 
 

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