GC-21スポーツカー

第5回 手抜きは許されない「型取り」と「貼りこみ」

CAMという最新鋭の機械のおかげで、アッパーカウルのマスターモデルはスイスイっと出来ちゃったんだけど、やっぱり安くなったとはいえ経費的な負担はかなりキビシイ。そこで、アッパーほど精度を求められないアンダーカウルのマスターモデルは、従来どおりCADで描いた図面を元に木型屋さんが作り、これを磨きこんで作り上げ ます。

木型からアンダーカウルのマスターモデルになるまで。こんな風に変化していきます。

マスターモデルが完成したら、この外側にカーボンを貼って、カウルの型(メス型)を作ります。この作業を「型取り」と呼びます。まず、作業の下準備として、ゲルコートという樹脂をスプレーガンでマスターモデルに吹き付けて、型の表面になる部分を滑らかにします。製品の精度を上げるために、これは大事な作業。手抜きせずこういう作業をやらないといいモノはできないんですよ。そして、その上に、ガラス繊維とカーボンを交互に1cmくらいの厚さまで貼りこんでいくと、メス型が完成します。

マスターモデルにゲルコートをスプレー。   ガラス繊維を貼ったところ。   ガラス繊維の上にカーボンを貼っていく。

乾いたらメス型をマスターモデルから外すんですが、これもただパカっと剥がすわけにはいきません。外したときに型が歪まないように、あらかじめベニヤで枠を組んでおきます。この枠は裏返したときに作業台にもなりますから、底面はフラットになるように作らないといけません。芸が細かいでしょ?

ベニヤの型枠を組んだところ その1。   ベニヤの型枠を組んだところ その2。   メス型をマスターから外して裏返しに置くと、ベニヤの枠は作業台に早変わり。

さて、メス型が完成したらいよいよカウル本体を製作する「貼りこみ」に入ります。
裏返したメス型の内側をきれいに磨き、出来上がったカウルが剥がれやすくなるよう離型(りけい)処理をします。これはテフロン樹脂やワックスなどを塗るんですが、これをしないとカーボンが固まったときに型とくっついて大変なことになります。
カウルとなるカーボンは、ドライヤーで暖めながらヘラを使って丁寧に貼っていきます。表面になる部分のカーボンを貼り終えたら、ノーメックス製のハニカム、そしてまたカーボンと重ねていきます。ハニカムはカウルの芯のようなもので、これでカウルの強度を支えます。両者は接着シートでピッタリと貼り合わされます。

カーボン貼りこみ作業中。ドライヤーとヘラを駆使します。   ハニカムを貼っています。これがカウルの芯になります。

接着シートを貼っています。これでカーボンとハニカムをくっつけます。   型に貼りこんだ後にフィルムで覆い、空気を抜いて型に密着させます。


でも、ただ貼って終わりとはいきません。そのままでは型との間に隙間ができて、型どおりのカウルはできませんので、ここで最後の裏ワザともいうべき処理を施します。どうするかというと、全体をリリースフィルム(赤いフィルム)、ブリーザー(綿のようなもの)、バックフィルムという順に覆い、この2つのフィルム間の空気を抜き取って真空にします。綿は均一に空気が抜けるように入れるわけです。こうすることで、型とカウルがピッタリ密着して、型どおりの狂いのない製品ができます。ね、考えてるでしょ?

さて、ここまで読んでくれたキミは、きっと平成モータースポーツ塾も読んでいると思うけど、ここでちょっと復習。第2講義「レーシングカーの素材」の第1回「カーボンファイバー」と第2回「カーボンでモノを作るには」をもう一度見てみましょう。ほぉらね。今回の話がかなり理解できたでしょ。

では、次はいよいよ出来上がったカウルが登場します。



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